杉浦農園への見学の感想を書いておきます。
なんだかんだと2週間近く経ってしまいました。感想を公開します。
日時:5月30日(土)
場所:杉浦農園(奈良県)
無農薬・有機栽培をされて、自家採種までして今年で7年になる杉浦農園の杉浦さんに話を伺えば、これまでのことやこれからのことで何かヒントがもらえるだろうと思って、見学会に参加しました。
写真:杉浦農園の畑
杉浦農園についてその場所の感想としては、金剛山から流れる豊富な水が水路を駆け下り、作物の出荷作業や事務作業もできる小屋もあり、その土地の棚田を利用した農園でした。
杉浦さんは脱サラされた後、大阪の能勢にある農場で農法や作業を教わった後に、知人の紹介などで現在の奈良の土地で農地を借りられて、近隣のレストランや直売会や、直送サービスなどをされている。
特に印象に残ったことは、
「これまで自然農法や有機農法の書籍を読みまくっくたり、EM菌とかダルマ菌、ニームなどの資材を購入して、自分の畑で試してみたりしたが、どれも合わずにいたがそれが何故かわからなかった。
去年6年目にして、畑を信じて畑にあう手法や資材を自分で探していかなければならないことに気が付いた。書籍は参考書と割り切る。」(農業に王道なし!ということですね)
堆肥も自分の畑で作られているということで見せて頂きました。
秋から冬にかけて山から枯れ草を集めてきて、そこに水を掛けて踏み固め、そこに米ぬかと買ってきた鶏糞を混ぜて、発酵させる。この時雨風を防ぐために積み 上げたところに絨毯を置いておくといい!(杉浦さん曰く、「市販されている鶏糞は完全には発酵していない」。不完全堆肥を土に混ぜるとガスが発生して、作 物の根をいためてしまうので、市販品を購入したら、自分の畑で納得するまで発酵させてから使う方がいいらしい)
実際に触ってみると、しっとりとしたさわり心地で全く鶏糞の臭いがなく、土の香りに近かったのには驚いた。(発酵時はすごく高温になり、雑菌などの悪玉菌は殺菌できるらしい。)
自社の自家菜園では今春は直播が大半だったが、その後の生育でばらつき、虫食いが多かったのでその点も聞いてみたら。。。
「直播すると、苗の一番弱い時期を天敵にさらしてしまい食害や病気になりやすい。ポットに蒔いて、
ある程度大きくなるまで生育させてから定植した方が、例え食害されたりしても勢いが強いので負けない。もし畑に電気があるなら、育苗用の電気シートを使っ たりできる。うち(杉浦農園)では、ビニルハウスを貰い受けて、その中で発酵温床を作り、その上でポットを育苗すれば春先でも育ちがいい」
とのことだった。(発酵温床した後は、そのまま堆肥として利用できるし一石二鳥なのかも)
高槻や箕面も電気がないので、『発酵温床』というのは真似できればなぁと思った。
ビニルハウスはどうするかは別問題だが。。。
水やりに関して、杉浦農園では金剛山からの水をそのまま畑に引き込み潅水させているようだった
杉浦さん曰く「畝の上から如雨露などで水を掛けても、流れてしまうだけで土の中に浸透していきにくい。水を引き入れて潅水させる効率よく水をやることができる。ヤマイモなどはこうやって潅水してやると粘り気がでて非常に美味しくなる。」
高槻は水路が隣接するので、この方法も有効かもしれないが、箕面を難しいだろうと。
土作りに関して、春以降の作付けではセルカ(貝殻を粉砕したもの)、堆肥、おがくずなどを入れて、2週間ほどで直播や定植していたのだが。。。
杉浦さん曰く「有機で作物を作るなら、もっと前から土作りをしてやる必要がある。化学肥料なら即効性があるが、有機は土への溶け込みが非常に緩やかなので、作物を作るための状態にするには時間がかかる。うちでは約2ヶ月前から作業している」。
春先にばたばたしていた時期にはすでに作業していなければならなかったわけだ。
マルチシートの使用に関して、追肥をしにくい、結構高価な資材などのデメリットもあるが、湿度を保ったり、地温上昇、防虫や鳥害防止などにメリットももある杉浦農園ではどうなのだろうか?
農園を見るとキャベツには防虫用の寒冷紗が貼ってあるが、地温上昇などのマルチシートは使われていない。
杉浦さん曰く「まず追肥をしにくくなる点、作物の株元に逃げ込む幼虫などを探すにも手間がかかるし、高価だし。なるだけ使わないようにしている。畝に生え る雑草を抜いて乾燥したものを畝に戻し、マルチングとして利用するようにしている。ビジネスとして農業をするためには持続できる工夫をしていかなければな らないのだ」ということでした。
後は農園を散策すると虫が多いことに気が付く。
畦はきれいに草刈していたし、その辺りはどうされているか聞いてみた。
「実は今年は畦の草刈をするのが遅れた。その間にレタスにアブラムシが大量に繁殖してしまっていた。その後、畦の草刈をしたら、そうも畦の草にテントウム シが着ていたのか、草刈した後レタスについてアブラムシを全部食い尽くしてくれた。草刈を早めにしておいたらどうなっていたか?わからない。草刈の時期と いうものも考えものだなぁー」と杉浦さんが仰られた。(テントウムシは1匹辺り1日に160匹のアブラムシを食べるというデータもあるらしい)
ただ「虫は気まぐれなので、ずっと居着いてくれるとは限らない」と続けられた。
実際農業されている方で、天敵になる虫を育成して、菜園に利用していることもあるようだ。
最後に農薬に関してたずねてみた。
杉浦さん曰く「無農薬といっても自分のところでの『無農薬とはこういうことです』と定義づけることは重要。完全無農薬でしようとすると、種や苗を購入してきた時には既に農薬がかかっている可能性が高いので、自家菜園での育成では農薬を一切使わない。とするのが現実的な無農薬農法だろう」。
他にもいろいろなことをお聞きしたが、抜粋して以上のような内容でした。
自分自身も農家をしているので、ヒントになる部分はヒントにし、自家菜園で利用できることは利用させてもらいたいと思いました。農業とは自然相手に闘う仕事なので、その土地の性格、風土、気候、季節などでかなりやり方が異なってくると思うが、そのベースになる部分を引き継げていければいいなぁーと感じた。
後日杉浦農園で頂いた玉ねぎをスタッフ全員でいただきました。
スライスしようと二つに切ると、切り口から水分がわき出るほどのジューシーな玉ねぎ。
軽く水にさらしただけなのにまったく辛みのない、甘い玉ねぎは杉浦さんのこだわりを感じる素晴らしい玉ねぎでした。