「頭寒足熱(ずかんそくねつ)」という言葉は今でもときどき使われると思います。この言葉の語源をたどると江戸時代にまでさかのぼることができるそうですよ。
頭寒足熱の意味は、”頭は寒いままでいいから足は温めなさい”ということかと、ずっと思っていました。ですが実は、もっと深い意味が隠されていました。この言葉に秘められたメッセージをいろいろと探ってみましょう。
まず頭寒足熱の「足熱」には「足を動かしなさい」という考え方が含まれているそうです。
足は第2の心臓といわれていますが、それは歩くことにより筋肉が収縮し血液を心臓に戻す原動力になっているためなのです。心臓は全身に血液を循環させる働きがありますが、足は最も遠いところにあるので、血液を心臓まで押し上げるのは大変な労力なのです。
つまり、足を温めると体全体の血流がよくなり、足先の冷えがとれ体全体の体温が均一になり、病気になりにくい体へと変わっていくのです。
逆に、足を冷やすと血流が悪くなり、高血圧や心臓病、動脈硬化の原因になります。
人の体で足は冷えやすい部位ですので、体全体を温めるイメージで足が冷えないように気をつけることが大切です。
続いて「頭寒」の意味についてです。これは冷やすということではなく、「温めてはいけない」という意味だと捉えたほうがよいそうです。
脳に運ばれる栄養と酸素は血液によって運ばれ、頭を使うほどに脳を流れる血液の量も増えます。さらにストレスや睡眠不足、糖分の欠乏が起こると、脳はもっと活動力を高めようとして血液量を増やそうとします。人の体は血液の流れる量が増えれば熱を帯びますが、頭を冷やした方が脳の働きはよくなるのです。
また頭寒足熱にすると、自律神経の働きを調整する効果もあるとされています。
副交感神経が働くと、人はリラックスした状態を保つことができます。
一方、仕事でイライラしたりストレスをためると交感神経が働いて血行が悪くなり、循環障害を引き起こすきっかけになることがあります。こうしたときに副交感神経を働かせるためには、血流が良くなる行為(お風呂に浸かるなど)を行えばよいとされ、特に足は重要なポイントとされるため、頭寒足熱が重要だとされるのです。
自律神経免疫療法の故福田稔先生はうつ病はについて”薬を使わなければ治りやすい”とし、「頭から足まで気を通し血流をよくすれば足まで温まり、頭寒足熱になり治っていきます」と語っていました。
頭への温灸は基礎的処方を済ませ、休みながら行う
ここで、「温灸」の話もしてみましょう。この「頭寒足熱」の原則に習うと頭は冷やした方がよいのですが、”頭に温灸をする”というのはどうなのでしょうか?
この件について、メーカーの三栄商会さんに聞いてみました。
同メーカーさんによると、温灸をして頭へ急激に血が行くときは、血管の拡張収縮により痛みなどが生じるケースもあるそうです。この場合は、きれいに流れる下地が血管にできていないということなので、肝臓と腎臓、下腹などを温めて、お手当ての基礎となるきれいな流れができる体になってから、患部をお手当てするのがよいそうです。できたら1カ月ぐらいは基礎的な処方だけ行って欲しいとのことでした。
また温灸のお手当てに掛かる時間は30分~1時間ぐらいが目安ですが、頭に行う場合は意識が”ぼぉっ”とするようなら10分ぐらいにして少し休みながら行うのがよいそうです。