近頃、TVや雑誌で頻繁に取り上げられるようになった「えごま油」や「亜麻仁油(フラックスシードオイル)」。これらは、ダイエットや痴ほう症予防などに効果があるとして、非常に人気で品薄になっています。
今日は、オメガ3を中心に健康美容とオイルの関係についてお伝えします。
●油(脂肪酸)の種類と含まれる食品 図のように油(脂肪酸)には、大きく分けて「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」があります。そして「不飽和脂肪酸」のなかに、原子の結びつきの数の違いにより「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」があり、「多価不飽和脂肪酸」に「オメガ6」と「オメガ3」が含まれています。
●体内で作れない「オメガ3」と「オメガ6」
「オメガ3」と「オメガ6」は、体内で作れない「必須脂肪酸」です。 「オメガ6」も必要なのですが、図を見ていただければわかるように、ごま油やコーン油など日常的に摂りやすい油となっています。 しかし、「オメガ3」は、しそ油(えごま油のこと)やイワシ、サンマなどの魚の油、亜麻仁油などとなっていて、現代人の食生活では摂りにくい油です。
●「オメガ3」と「オメガ6」の働き
「オメガ3」と「オメガ6」は、正反対の働きをします。
★細胞膜の構成
細胞膜は油でできています。特に細胞の多い脳は50%が油でできています。 オメガ3・・・EPA・DHA 細胞膜を軟らかくする オメガ6・・・アラキド酸 細胞膜を硬くする
★出血したとき
オメガ3・・血栓ができそうになると、血液を流れやすい状態にする オメガ6・・・エイコサノイドが増え血液を固めようとする
★炎症
オメガ3・・最小限にとどめる オメガ6・・・増大 オメガ3は、脳を軟らかくして血流を良くし、血管の血栓予防や、アトピー皮膚炎などの炎症を最小限におさえます。(NPO法人がん克服サポート研究会・希輝通信12号より)
●「オメガ6」より「オメガ3」が不足!
「オメガ3」と「オメガ6」は、バランスが大事で、理想は「オメガ3」:「オメガ6」=1:4だといわれています。かっての日本人の食生活は、このバランスが保たれていたのですが、現代人は「オメガ6」が摂りすぎていて、人によっては「オメガ3」:「オメガ6」=1:20、もっとひどい人は「オメガ3」:「オメガ6」=1:40になっているといわれています。高血圧、痴ほう症、アトピー、高脂血症などは「オメガ3」を多く摂ることで、改善される例があることもわかってきました。
●オメガ3の必要量
オメガ3の必要量は、2005年から厚生労働省の「食事摂取基準」に掲載されています。
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オメガ6
オメガ3
男性
目安量11g
目標量 2.6g以上
女性
目安量9.5g
目標量 2.2g以上
オメガ6は摂りすぎなので、目安量と書かれ、オメガ3は不足しているので、目標量と書かれています。 オイルの場合、小さじ1杯=2.5gくらいです。
●「オメガ3」を多く含むオイル・食品 ★麻の実油(ヘンプシードオイル)
原料・・・麻(大麻)の種 100g中(オメガ3・オメガ6)・・・20g・60g 特徴・・・ガンマ・リノレン酸(オメガ6系)を2~4%も含んでいます。 この脂肪酸を含む天然の食用油は麻の実油のみ。 (注)ガンマ・リノレン酸の効能 血圧の安定や子宮筋の調節,アレルギー反応の調整など。ガンマ・リノレン酸を充分摂取すると生理痛やPMS(生理前症候群)を改善し、アトピー性皮膚炎やリウマチなどのアレルギー性疾患に効果的だといわれています。ガンマ・リノレン酸を多く含むものに、月見草があります。
●お客様から「亜麻仁油を買っていたが、ヘンプオイルを試してみたら、おいしくてファンになった」との声がありました。
★インカインチオイル 原料・・・インカインチナッツ 100g中(オメガ3・オメガ6)・・・約50g・30g 特徴・・・酸化しにくい唯一のオメガ3オイル。炒めものもできる。その理由は、酸化防止剤としても利用されているビタミンEが含まれているため。ほかのオイルは含まれていない。
★亜麻仁油(フラックスシードオイル)
原料・・・亜麻(アマ)の種 100g中(オメガ3・オメガ6)・・・約50g・?
★えごまオイル
原料・・・えごま 100g中(オメガ3・オメガ6)・・・約50g・? ※えごまオイル、えごま油、しそ油は同じ。えごまがシソ科に属するのでしそ油とも言われるそうです
★ウドズ・オイル
オメガ3:オメガ6が1:2でブレンドされているオイル。健康のために作られ、製法や保存法までこだわって作られている。
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★麻の実(生)
原料・・・麻(大麻)の実 100g中(オメガ3・オメガ6)・・・10g・29.2g 麻の実は、必須脂肪酸のほかに、必須アミノ酸の9種類すべてが含まれています。またカルシウム、鉄、葉酸、カリウムなどのミネラルも含まれています。タンパク質は32g(100g中)も含まれています。
★亜麻の実(フラックスシード)
原料・・・亜麻の種(生)。*生は日本では食用では販売されていません。ローストのみ。 100g中(オメガ3・オメガ6)・・・23g・18g
★チアシード 原料・・・果実チアの種 100g中(オメガ3・オメガ6)・・・19.52g・6.4g
★くるみ 原料・・・くるみ 100g中(オメガ3・オメガ6)・・・10g弱・? *実や種には、脂肪酸以外に食物繊維やビタミン、ミネラルなどの栄養も含んでいます。
●種実類もオメガ3、オメガ6は多い
また、緑黄色野菜(特にほうれん草、ロメインレタス、青梗菜など)にもオメガ3やオメガ6は含まれています。ナッツや緑黄色野菜をたくさん食べることで、少しずつ摂ることができます。 種実類に含まれるオメガ3とオメガ6の割合
種実名 |
「オメガ3」:「オメガ6」 |
アーモンド |
1:1267 |
松の実 |
1:229 |
ごま |
1:152 |
カシューナッツ |
1:125 |
クルミ |
1:5 |
麻の実 |
1:3 |
チアシード |
1:0.28 |
えごま |
1:0.22 |
●効率よくオメガ3を取り入れるために・・・
オメガ3(αリノレン酸)から転換されるEPA、DHA。でもオメガ3をせっかく摂っても、EPA、DHAに転換されにくい場合があります。つまり、えごま油や亜麻仁油を摂っても、効果があまり期待できない場合があるのです。それはつぎのような場合です。 ①オメガ6の過剰 食事の中で、揚げ物、炒めもの、あるいは油ベースのドレッシングなどを使用していると、オメガ6の摂取過剰のためにオメガ3とのバランスが崩壊し、αリノレン酸からEPA、DHAへの転換が妨げられてしまいます。また肉類に含まれる飽和脂肪やマーガリン、加工食品に含まれるトランス脂肪も同様です。 ②アレルギー疾患や持病の影響 アトピー性皮膚炎やじんましん、ぜんそく、花粉症などといったアレルギー体質のある人、あるいは糖尿病の人も転換能力が低いようです。 ③サプリメントを摂っている場合、その中にビタミンAが含まれていると、転換が妨げられます。 同様に女性でピル(避妊薬)を使用している場合は、銅の過剰摂取となり、やはり転換が妨げられます。 ④そのほか ストレスやカフェイン、ニコチン、砂糖、動物性食品、アルコールの摂取も転換の妨げとなります。 (『ナチュラルハイジーンQ&Aブック2』)より
■その他のオイルについて
●ココナッツオイルは牛・豚の脂身と同様の「飽和脂肪酸」 植物性であるココナッツオイルは、飽和脂肪酸なのですが、中鎖脂肪酸を含む優れたオイルとして注目されています。ほかの油と異なり、体に蓄積されることはありません。肝臓に入って分解され、すぐにエネルギーとして使われます。また、ココナッツオイルは、脳のエネルギー源「ケトン体」が補給できるため、アメリカでは脳の病気の方に使っている症例もあります。酸化しにくいので、長期保存ができ、その品質を長く保つことができます。
●オリーブオイルとグレープシードオイル
ヘルシーといわれるオリーブオイルですが、実は必須脂肪酸ではないので、無理に摂る必要はありません。パスタなどの風味づけ以外なら、グレープシードオイルがおすすめです。 グレープシードオイルは、ぶどうの種をしぼったものです。ビタミンEやポリノフェールも入っています。 *オリーブオイルとグレープシードオイルのオメガ6、オメガ9含有率
オイル名 |
オメガ6(必須脂肪酸) |
オメガ9 |
オリーブオイル |
10% |
75% |
グレープシードオイル |
65% |
18% |